マラソンは42・195キロも走らなければなりません。その、とても厳しいスポーツを、日本人は愛しています。どうしてでしょうか? タイ最大のマラソン大会であるバンコクマラソンでも、昨年のフルマラソン(42・195キロ)の出場者が約1500人。そのうち120人が日本人だったのです。
日本生産性本部が出している「レジャー白書」によると、日本で日常的にマラソンかジョギングをしている人は、2009年時点で2810万人いました。日本の人口は1億2000万人ですから、その20%以上の人がマラソンやジョギングをしていることになります。
例えば日本最大のマラソン大会である東京マラソン2012は、フルマラソン(42・195キロ)の定員が3万2000人ですが、応募者は28万人もいました。
日本の学校ではスポーツが盛んです。授業が終った後に多くの学生たちがクラブ活動をします。そこで人気のスポーツは、男子が野球、サッカー、バスケットボール、バレーボールです。女子はテニス、バスケットボール、バレーボール。このように日本の中学生や、高校生が好きなのは球技です。球技以外では、背が伸びる水泳の人気が高いです。一方、陸上競技はあまり人気がありません。
では、何歳くらいからランニングが好きになるのでしょうか?多くの日本人がランニングを始める年齢は、30歳代、40歳代、50歳代です。中年と言われる年齢で、ちょうど体力が落ちてきて、高齢に近づいたことに気付く頃です。その時に、一人でも、どこでも、いつでも、気軽に出来るジョギングを始める人が多いのです。
球技は格闘技と同じで、他人と衝突するため、体が硬くなった中年は、怪我をする可能性が大きくなります。また、球技をするには、ある程度の人数と広い運動場が必要です。こういったことから、中年になってから球技をするのは難しいのです。
日本は全国の道路がとてもよく整備されています。また車の排気ガスも制限されています。ですから、自宅のドアを出たら、すぐに始めることができるランニングやジョギングの人気が高いのです。
日本人は、どうして体力の衰えを気にするのでしょうか? それは、寿命が延びているからです。日本人の平均寿命は2010年に女性が世界1位の86.4歳、男性が世界4位の79・6歳でした。この日本人の長い寿命は、過去50年間に急速に伸びました。
30年前の1980年には女性が78歳、男性が73歳。50年前の1960年は女性が70歳、男性が65歳だったのです。日本人の寿命は過去50年間で約20歳も伸びたのです。
この寿命の伸びで、日本人は仕事から引退してからの余生が凄く伸びました。50年前は55歳に定年退職してから、女性で15年、男性は10年しか余生がありませんでした。
しかし今では60歳に定年退職すると、女性は26年、男性は20年も余生があるのです。この余生を楽しむために一番大切なことは健康です。病気や体力が落ちて、動けなくなり、ベッドに寝たきりになってしまっては、せっかくの長い余生が楽しめません。そこで、日本人は健康に気を遣うようになりました。
ジョギングを定期的に行うと、だんだんと体力が高まります。すると、もっと速く走る、もっと長い距離を走るといった目標を持ちたくなります。そして、市民マラソン大会に挑戦したくなるのです。
そんな市民の希望に応えて、日本各地でマラソン大会がたくさん開催されます。5000人以上参加する大型の大会だけで、1年間に約100か所で開催されます。10キロマラソンを含めると、何千か所で大会が開かれています。日本人にとってマラソンは、健康増進のため気軽にできるスポーツで、また挑戦できるやり甲斐のあるアクティビティーなのです。by たいすけ