野田佳彦(よしひこ・のだ)首相は、首相の座を掛けた民主党の代表選挙の演説で、自分のことを「ドジョウ」に例えた。「ドジョウが金魚のまねをしても仕方が無い。こういうルックスなので、首相になっても、国民の支持率は上がりません。だから国会の満期まで解散はしません」
「ドジョウが金魚のまねをしても仕方が無い」というのは、野田氏が好きな詩人の詩から引用したものだ。すなわち、日本の政治のトップである首相であっても、一般庶民と同じということを強調したのだ。
野田氏は演説の締めくくりも、「ドジョウのように泥臭く、国民のために汗をかきたい」と力を込めた。このユーモアを織り交ぜ、感情を込めた話術で、民主党議員の票が集まったとの見方もある。
米国のワシントン・ポストは、野田氏が首相に就任すると、「ドジョウよ、おめでとう。野田政権には、できるだけ長く続いてほしい」とする社説を掲載した。
今や野田氏は「ドジョウ首相」と呼ばれるようになった。そこで、日本の伝統的な庶民舞踊である「どじょうすくい踊り」の発祥地、島根(しまね)県安来(やすぎ)市では、盛り上がりを見せている。
「どじょうすくい踊り」は、安来節(やすぎぶし)という民謡とともに踊られる。この安来節を保存するための協会は、設立から今年で100周年を迎える。そこで、「ドジョウ首相」の誕生をきっかけに、安来節と「どじょうすくい踊り」のプロモーションを行う予定だ。
一方、日本一の養殖ドジョウの産地である大分(おおいた)県や、ドジョウ鍋が有名な福岡(ふくおか)県柳川(やながわ)市でも、ドジョウ人気を高めようと活気づいている。