福島原子力発電所の事故発生以来、近隣の地域に放射性物質が拡散し、稲も放射性セシウムで汚染された。肉牛を飼う農家の中に、その稲藁(稲のワラ)を食べたところがあり、牛が放射線で汚染された。これまでの検査で、36頭の肉から、国の肉の基準値(1キロあたり500ベクレル)を超えるセシウムが検出された。それらの肉は、46都道府県に流通している。
放射線で汚染された稲藁を食べたと考えられる肉牛は、7月24日時点で約2570頭に上り、出荷先は14県に及ぶ。内訳は、宮城(みやぎ)県1183頭、福島県554頭、群馬(ぐんま)県368頭、静岡(しずおか)県138頭、山形(やまがた)県94頭となっている。
稲藁から検出されたセシウムは最大で約3万4千ベクレル。乾燥前の水を含んだ状態に換算すると基準値の26倍だった。牛の出荷先は県内のほか、東京、山形、新潟(にいがた)、千葉(ちば)の4都県にわたっていた。
この調査は6月10~13日にインターネット上で実施した。1都3県(東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県)の男女1万人(男性5000人、女性5000人)から意見を聞いた。
細野 豪志(ごうし・ほその)消費者担当大臣は「毎日食べ続けるのは問題だと思うが、わずかに口にしただけでは健康に大きな影響はない」と述べ、冷静な対応を呼びかた。
しかし、「暫定基準値をかなり上回っていることは問題だ。消費者庁として注視していく。国民に分かりやすく情報発信する」と述べ、消費者の不安が広がらないように、情報公開を進めていく考えを強調した。
多くの焼き肉店がある東京・上野の街は買い物客でにぎわうが、焼き肉店の店内はランチタイムでも空席が目立つ。上野駅近くのビル2階に店を構える「焼肉釜山(ぷさん)」のオーナーは次のように言う。「セシウム汚染が発覚し、売り上げは半分程度に落ち込んだ。土日に多かった子供連れの客はほとんどなくなり、常連客からも『放射能は大丈夫か』と心配する声が多い」
一方、大手チェーン店でも使用を自粛する動きが広がっている。東京都内にある店は「個体識別番号を気にされるお客様もいらっしゃる。和牛は産地がはっきりわかるので、汚染された牛の肉を入れないようにすうことは簡単にできる」と話した。
客の反応はさまざま。川崎市の男性は「国産の肉は食べたくない。国が示している基準が本当に安全なのかも分からない。これからは産地を気にして食べたい」と言う。一方、東京都の男性は、「今のところ人体に影響は出ていない」。茨城県の男性も「ちょっと騒ぎすぎのような気がする」と言った。