東日本大震災から何ヶ月も経ち、現地で支援するボランティアの人数が急激に減少している。岩手(いわて)、宮城(みやぎ)、福島(ふくしま)の3県で活動したボランティアの総数は、5月2日~8日の連休中は、5万4100人だった。これが現在は1週間で3万人以下になっている。まだまだボランティアが必要なため、各団体はボランティアをしたい人が現地に行きやすいような環境整備に躍起だ。
社会福祉協議会や旅行代理店、バス会社などが、被災地域へ行くツアーを次々と企画している。それに合わせ、日本政府観光庁は、ボランティアと観光をセットにした「ボランティアツアー」を積極的に展開するよう推進している。
例えば、JTBのボランティア・サポートバス・プランは、宮城(みやぎ)県でのボランティアと温泉がセットになった1泊3日のパッケージツアーだ。価格は1万7600円(6500バーツ)~2万600円(9600バーツ)。秋保温泉(あきうおんせん)に宿泊。食事は別。
近畿日本(きんきにほん)ツーリストは、宮城県の南三陸(みなみさんりく)町で「福興市(ふっこういち)」とボランティアをセットにしたツアーを行っている。福興市とは、災害からの復興のため、全国の特産品を集めて売る市場。コンサートなどイベントも開催される。このツアーは1泊3日のコースで2万4800円(9200バーツ)。義援金5000円(1850バーツ)が含まれている。土曜の深夜に東京をバスで出発。日曜日に福興市の運営手伝いをボランティアとして行う。その後、福興市で買い物をし、日曜の夜に現地を出発、月曜日の朝に東京に戻ってくる。
これらは一例に過ぎない。ほかにも各地域の社会福祉協議会が設定するツアーなど、様々なツアーが企画されている。ボランティアツアーは人気があり、すぐに満席になるケースも多い。
東日本震災は、規模が甚大なだけに、移動手段、現地での活動、宿泊や食事などに不安を感じるボランティアが少なくない。ボランティアツアーはその負担を軽減する。実際に参加者の8~9割が1人で参加している。近畿日本ツーリストのボランティアツアーに参加した山村美樹(やまむら・みき)さん(20)は、「1人で何かをするには情報が少なすぎたし、不安もあった。初めて現地に入るなら、プロの力を借りてと思った」と話す。
とはいえ、ボランティアツアーを主催する側にも難しさが残る。大災害の現場に、「ツアー」という形で、ボランティアの初心者送り込むことが良いことなのか? 「ボランティアが泊まる宿泊施設があるなら、被災者に泊まらせるべきだ」「観光気分で来られても現地の人は困るのでは」といったネガティブな意見もある。
しかし、現地には「ボランティアの数は現状でも全く足りていない状況。支援作業は尽きない」(南三陸(みなみさんりく)町災害ボランティアセンター)という声が強い。そこで各社の担当者が何度も足を運び、徹底的に現地のニーズを把握した上でボランティアツアーを行うことを決断してきた。「現地からは肩肘張らずに参加してほしいという声がある。義援金を送ってもらうだけでなく、絆を意識した活動をやってほしいと言われた。そこで実現に踏み切ることができた」(近畿日本ツーリスト)。さらに6月7日に日本政府観光庁から、ボランティアと観光ツアーの推奨が出たことは「ボランティアツアーをやる上で大きな支えになる」と話す。