日本に関することで、「ナデシコ」という言葉をしばしば聞きますね。日本の女子サッカーリーグは愛称が「なでしこリーグ」で、日本代表チームは「なでしこジャパン」です。他にも、タイの皆さんが大好きなアニメでは、「化物語(ばけものがたり)」の登場人物に、蛇に巻き付かれた少女の千石撫子(なでしこ・せんごく)がいます。
「CLOCK ZERO ~終焉の一秒~」の主人公は、小学校6年生の九楼撫子(なでしこ・くろー)ですね。「NARUTO」にも、「撫子のくノ一」(なでしこのくのいち)という話があります。「機動戦艦ナデシコ(漫画は遊撃宇宙戦艦ナデシコ)」というアニメもありました。仮面ライダーでも、「フォーゼ」の中に登場する史上最強の女子高生は、美咲撫子(なでしこ・みさき)で、仮面ライダーなでしこに変身します!
この「ナデシコ」とは、元々は花の名前で、漢字では「撫子」と書きます。その種類の1つ、カワラナデシコは、別名が「ヤマトナデシコ」です。
古代は「日本」のことを「ヤマト」と呼んでいました。すなわち、「ヤマトナデシコ」とは、「日本のナデシコ」という意味なのです。ですから、日本人が「ナデシコ」と使うとき、多くの場合は、この「ヤマトナデシコ」のことであり、また、日本女性の比喩なのです。
「ヤマトナデシコ」は、日本の秋を代表する7種類の花の1つです。7月から10月にかけて花を咲かせます。花弁の先が細く、切れているのが特徴です。花の色はピンクが多いのですが、白もあります。
その姿は、「美しさ」「優雅さ」「しなやかさ」「しとやかさ」、そして「儚さ」を合わせ持っており、日本人の美意識にとても合います。それは理想的な日本人女性の姿です。このため、日本人女性を象徴する花として、比喩で用いられるのです。その花言葉は、「可憐」「貞節」です。
「ヤマトナデシコ」は古代から、日本人に愛されてきた花です。万葉集には26首もの歌に登場します。例えば、747年には「うら恋し我が背の君はなでしこが」という歌が詠まれました。
うら恋し 我が背の君は なでしこが 花にもがもな 朝な朝な見む
この歌の意味は「とても恋しいあなたが、ナデシコの花だったらいいのに。それなら、私は毎朝、あなたを見ることでしょう」と恋心を表わしたものです。
また、源氏物語の26帖は「常夏(とこなつ)」というタイトルです。そこでは、古代の貴族たちが、ナデシコを栽培して鑑賞していたことが伺えます。とこなつは、ナデシコを意味します。日本には寒い冬があり、多くの草花は枯れてしまいます。ところが、ナデシコは一年中枯れないため、「いつも夏の状態」という意味の「とこなつ」という別名を持つのです。
ちなみに、「カーネーション」という花は、15世紀頃に西洋で、ナデシコを品種改良して生み出されたものです。by たいすけ